有機物合成のクロスカップリングで簡便法開発
名古屋大学大学院の伊丹健一郎教授(物質理学)らの研究グループは8日、異なる有機物同士を合成するクロスカップリング反応の新たな方法を開発したと発表した。
鈴木章・北海道大学名誉教授が2010年にノーベル化学賞を受賞する理由となったパラジウムを用いた方法よりも、痛風治療薬などの医薬品や新素材を安く簡単に作れると研究グループはしており、鈴木名誉教授も「興味深い」と関心を寄せている。成果は米化学会誌電子版に9日掲載される。
鈴木名誉教授が開発した合成法「スズキ・カップリング」は、毒性が少なく応用範囲が広いのが大きな特長で、医薬品やテレビ液晶の開発に道を開いた。ただ、触媒に用いるレアメタルの一種パラジウムが高価で入手が難しいうえ、ホウ素などの物質を使って有機物同士を結びつけやすくする下準備に手間がかかった。
伊丹教授らは、パラジウムに比べ20分の1ほどの安価で入手が比較的容易なニッケルを使った触媒や、下準備なく有機化合物同士を一気に結びつける手法をそれぞれ開発。クロスカップリングの簡易化にメドをつけた。この手法で合成できる割合は80~98%という。
伊丹教授は「痛風治療薬の製造工程が短縮できるほか、アルツハイマー治療薬の新規開発をしたり携帯電話の液晶の製造コストを下げたりすることが期待できる」と話している。
この開発について、鈴木名誉教授は、「論文を実際に吟味しなければ適切な評価は難しいが、ホウ素の化合物を用いずに、ニッケルの触媒で一気に有機物同士が結合できるのは大変面白い」と評価し、「今後が大変楽しみだ」と日本人研究者の活躍に期待した。
◆クロスカップリング反応=異なる有機化合物を結合させて新たな物質を人為的に作り出す方法の一つで、「異種(クロス)の部品を結ぶ(カップリング)」という意味。新薬や新素材の開発につながるため、世界中の化学者が新たな触媒の利用などを通じて効果的な手法の開発を競っている。日本人研究者の活躍が目立っている。(読売) Tweet

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