Friday, March 01, 2013

有毒の硫化水素、腎臓や脳に…組織保護に関与か


毒ガスとして知られる硫化水素が、体内で生成され腎臓や脳などの組織の保護機能を担っている――。  そんな研究が国立精神・神経医療研究センター(NCNP)で進んでいる。同センター神経薬理研究部の木村英雄部長らの研究グループは、硫化水素が体内でより効率よく生成される新たな経路を発見し、1月22日、英国のオンライン科学誌に掲載された。  硫化水素が哺乳類の脳に存在することは、1989年にカナダの研究者により初めて発表された。この報告をきっかけに、当時、米カリフォルニア州の研究所にいた木村部長が、ラットの脳で硫化水素が生成され、海馬での記憶増強に関わっていることを突き止めた。  現在進めている研究で、木村部長のグループは、腎機能に障害を持つマウスに、D―システインというアミノ酸を与えたところ、腎臓で硫化水素が生成され、症状が著しく軽減したことを発見した。  これまで、体内でL―システインと呼ばれるアミノ酸から硫化水素が生成されることはわかっていたが、D―システインは、腎臓内でL―システインよりも80倍効率よく硫化水素を生成し、しかも副作用が少ないこともわかった。  腎不全の重症化を防止し、人工透析の導入を遅らせる治療薬は世界的にもまだない。現在、L―システインを使った新薬開発が、オランダで進んでおり、昨年末に治験の最終段階が終了している。D―システインの臨床試験が始まれば、より有効な新薬開発への期待が高まる。  すでに、カナダの腎臓移植の研究者から木村部長らの研究グループに共同研究の打診があったという。木村部長は「今後研究が進めば、慢性の腎不全や糖尿病による腎機能低下の治療薬、さらに移植される腎臓の保護薬としても応用できるはず」と自信を見せる。  この成果について、硫化水素が心筋細胞の老化を抑えることを九州大の研究グループと共に解明した熊本大大学院の赤池孝章教授は「新しい経路が発見されたことで、(腎不全など)臓器の障害に対して、予防的な治療につながる価値の高い研究だ」と評価している。(読売)

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