敦賀半島の原子力発電所のいずれかで放射能漏れ事故が起きた場合、敦賀湾の海底では30年後も海面と比べて影響が残りやすい傾向があることが、若狭湾エネルギー研究センター(福井県敦賀市長谷)の辻宏和研究開発部長らのグループが行った模擬実験で分かった。
グループは「漁業に長期的な影響を与えないよう、海底のしゅんせつ技術の向上などに力を入れる必要がある」としている。
敦賀半島の先端には、日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(同市白木)、日本原子力発電敦賀原発(同市明神町)1、2号機、関西電力美浜原発(美浜町丹生)1~3号機の計6基が密集している。辻部長や伊藤英樹主査研究員らは文部科学省の依頼で2007年から、若狭湾内の海流や海底の地形、地質などを調べ、海洋汚染の広がり方を長期予測するシステムを開発した。
模擬実験では、原発1基で何らかの事故が発生し、代表的なウラン核分裂生成物のセシウム137(半減期約30年)が瞬間的に大気中に放出されたと想定。放出量を、複数基から放射性物質が漏れた福島第一原発事故の1万分の1に相当する1兆ベクレルと仮定して、海面と海底の汚染状況を計算した。
海面では、半島東側の敦賀湾に向かう東向きの海流の影響で湾内にセシウムがとどまるが、海水1リットル当たりのセシウム量は1年後には10万分の1の1ミリ・ベクレルに減り、事故前の濃度を下回った。その後も著しく低下していった。
一方、セシウムが堆積する海底では、若狭湾中心部の水深100メートル付近に時計回りの海流があるため、海底土に付着した1平方メートル当たりのセシウム量が1ベクレル以上になる範囲が1年後、最も遠くて半島の西約30キロにまで拡大。年を追うごとに範囲は狭まるものの、濃度が最高になる敦賀湾内では、1年後の50ベクレルが30年後でも最大で5分の1にしか低減しなかった。
グループは若狭湾内と周辺河川の計130点で堆積物を採取し、放射性物質の分布状況を調査。旧ソ連などによる核実験で放出された量を基に、このシステムで模擬実験した結果と一致することも確認している。
辻部長は「海面と海底への影響を長期予測するシステムは世界的に非常に珍しい。50ベクレルでも海底汚染の程度は深刻なレベルではないが、放出量が増えれば、汚染レベルも比例して上がる」としている。(島田喜行)
(読売)
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